肛門嚢摘出
肛門嚢とは肛門の左右に存在する分泌腺です。
非常に臭気の強い分泌物がたまり便に少しづつ付着したり興奮時に肛門に力が入ると噴出したりします。トリミング時はシャンプー時に絞って排出します。
肛門嚢は細菌感染がおこると内部に膿がたまり、とても治りにくくなります。また、一旦治癒しても繰り返し再発する可能性が高い病気です。
肛門嚢は手術により摘出することが可能なので、摘出すれば再発の可能性はなくなり、定期的に絞る必要もなくなります。
手術は嚢を一部分でも残すと完治できなくなりますので、写真のように樹脂を注入し肛門嚢全体が確認できるようにしてから摘出します。
化膿した場合の治療だけでなく、頻繁に溜まりやすい子も摘出する場合があります。
最近多い疾患 「下痢」
暑くなってきて、家の中で涼しい場所を探したり、お散歩は暑くてぜぇぜぇしちゃうし・・・でも行きたいし・・・。
いつもの寝床が日向で熱くてやけどしちまうにゃ~。とか。
動物たちにとっても過ごしにくい受難の季節がやってきました。
こんな季節に圧倒的に多い症状が下痢、嘔吐です。
原因には様々なものがありますが、気を付けていただきたいのがフードと飲水の管理です。
フードは湿気でカビが生えたり細菌が増殖したりして下痢の原因となりますので、今の時期はできるだけ小袋で購入し、短期間で使い切るようにして下さい。
お水もお皿に入れて放置しておくとすぐに雑菌が繁殖します。1日2~3回は交換しお皿は洗剤でよく洗うようにして下さい。
動物たちも清潔な環境で暮らしているので、最近だんだん抵抗力がなくなってきているように感じます。
前肢骨折プレーティング
小型犬は前足の骨折が多くみられます。前足の骨は割りばし1本分程度しかありませんので、ソファーなどから飛び降りただけでも骨折してしまうことがあります。
ほとんどのケースでは骨折部分で曲がってしまうため手術して元通りに整復固定してあげる必要があります。
ギプス固定でも治らないことはありませんが、骨折部で曲がってしまうことが多く治療期間が長くなり、ギプス内で褥瘡ができるためおすすめはできません。
以前、比較的治療費のかからないピンニングという方法をご紹介しましたが、こちらもギプス固定の期間がやや長くかかります。
今回はプレーテイングについてご紹介します。
プレーテイングとはプレート(板状のもの)とスクリューで骨折部位を固定する方法です。現在はこの方法が最良であると考えられます。
プレートやスクリューには様々な素材があり、当院ではステンレス製と異物反応の少ないチタン製があり、またロッキングシステムというようなプレートとスクリューを一体化し、より安定的でさらに骨折部位の血行を遮断せずに治癒を早める方法があります。
写真の症例は治療費の経済的な問題からステンレス製プレートを使用して手術しました。術後2週間はギプス固定をします。骨の癒合にはおよそ2か月かかりますが、通常ほぼ1か月で普通に歩けるようになります。通常はステンレスプレートでも問題なく治癒します。骨が細くなってしまうという報告があるため、治癒後にプレートは除去することが理想ではありますが、当院では基本的にはプレートの除去手術をしません。長期間体内に温存する器具となりますので、できるだけアレルギー反応の少ないチタン素材が推奨されます。さらにロッキングプレートは術後に癒合不全を起こすような危険性は最小限となります。
この症例の治療費は手術、入院治療費、器具代、ギプスなど合わせまして15万円前後となりました。
治療費は動物の大きさ、骨折部位、プレートの種類、大きさ、スクリューの素材や本数により大きく変わることがあります。手術方法、器具の選定につきましてはご相談しながら進めさせていただきます。
保護猫ちゃんの退院
この黒猫ちゃんは県内の100頭以上の多頭飼育崩壊の家から保護されて、動物愛護センター経由で当院に運ばれました。
歯槽膿漏による口内炎がひどくご飯も食べられない状態だったのですが、処置後食欲も回復し体調がよくなったので保護センターに先日帰っていきました。
これから新しい飼主さんを探すことになるそうです。性格も良さそうなので優しい飼主さんに出会えるといいですね。
治療費は神奈川県獣医師会会員の動物病院が手分けをして、ボランティアで実費程度で行っています。この治療費は税金ではなく全て寄付金で賄われているそうです。
神奈川県では現在、殺処分ゼロを継続しています。
不幸な動物をなくすためにご協力していただける方がいらっしゃいましたら、神奈川県動物保護センターに是非ご寄付をお願い申し上げます。
耳用内視鏡の導入
耳の深部を確認するための内視鏡を導入致しました。
動物の耳は垂直耳道、水平耳道があり耳道の中間部で折れ曲がっています。
そのため通常の診療内で鼓膜近くまで確認することが困難な場合があります。
外耳炎の治療でなかなか治らない場合、鼓膜の直前に毛やいぶつのかたまりがつまっている事があり、内視鏡により確認しながら除去しなければなりません。
この治療には全身麻酔が必要となりますが、外耳炎が長期にわたり治らないなどお困りの方は是非ご相談ください。
動画リンク(外部サイトyoutube) https://www.youtube.com/watch?v=HEzjafD3uIc
マイヤーズカクテルについて
マイヤーズカクテル注射療法についてご説明します。
レシート、明細書にマイヤーズカクテルという名称が記載されている場合があります。
マイヤーズカクテルとはビタミン、ミネラルを適度に調合し栄養学的、薬理学的な効果を期待する療法です。
動物の体を作る細胞が活動するためには多くの分子レベルの栄養素が必要となります。
栄養の偏りは体調不良やアレルギーなど様々な病気の原因となり、自然治癒力の低下を招き病気が治りにくくなります。
中でもビタミンやミネラルは細胞レベルの健康を維持する働きに欠かすことができません。
マイヤーズカクテルの適応症(人における報告)
・気管支喘息
・偏頭痛発作
・全身倦怠感
・慢性疲労
・上部気道炎
・慢性副鼻腔炎
・口内炎
・アレルギー性鼻炎
・心不全
・狭心症
・蕁麻疹
・生理不順
・耳鳴り
・椎間板ヘルニア など
投与方法は血管からの点滴投与が効果的ですが皮下投与も可能です。
また高濃度ビタミンC点滴療法と同時投与も可能です。
ツメダニ
写真の中に見えるダニはツメダニというダニです。
大きな爪をもったダニで、皮膚の上で、吸血はせず体液を吸って寄生します。
肉眼で見つけるのが難しいダニで、激しいかゆみを伴う皮膚炎が生じ、発見するまでアレルギーなどとの鑑別が難しい場合もあります。
写真のツメダニはおなかに卵を抱えているようです。
乳歯遺残について
乳歯遺残とは、永久歯が生えているにも関わらず乳歯が抜けずに残っていることをいいます。
本来、永久歯が生える過程で乳歯を押し出して乳歯が抜けるはずが歯並びが悪いために乳歯が残ったまま永久歯が生えます。
特に顎の小さい小型犬にみられます。
乳歯を残したままにしておくと、乳歯と永久歯の間に汚れが溜まりお手入れがしにくかったり、歯石を形成したり、歯と歯がぶつかり痛みを生じたり、口の中を傷つけてしまったり…。乳歯を残していてもあまりメリットはありません。
写真のチワワさんは乳歯(青い矢印)の内側に永久歯(緑の矢印)が生えてきた為、乳歯が残ってしまっています。
前歯まで残ってしまうことは珍しいですが、顎が小さいと写真のような歯並びになることがあります。
当院では避妊去勢手術の際に乳歯の確認をして、残っていたら手術と一緒に麻酔下で抜くことをおすすめしています。
避妊去勢手術をしなくても乳歯抜歯のみの処置も行っております。(気になる方はお気軽にご相談ください)
松田
ノミ、マダニについて
猛暑の中でもノミやマダニは活発に動いています。
草むらに身を潜めわんちゃん、ねこちゃんが来るのをじっと待っています。
ノミは一度寄生すると体中駆け回り、吸血・産卵をはじめます。痒みが生じ、アレルギー性の皮膚炎、湿疹、寄生する数が多いと稀ですが貧血を起こすこともあります。
マダニはノミのように動き回るのではなく、皮膚に口を食い込ませて抜けないような体勢をとりつつ、吸血します。マダニもノミと同様、寄生する数が多いと貧血を起こすことがあります。
一度皮膚に噛みつくと満足に血を吸い終わるまで絶対に離れません。無理に引っ張ると頭と胴体がちぎれ、頭が残った部分の皮膚に異常をきたします。
わんちゃんねこちゃんの場合、薬を使い駆除するか器具を使って頭が残らないように取り除きます。
人に寄生した場合、皮膚を切り開いて頭が残らないように皮膚ごと切り取る処置をするようです。
突然できたイボが膨らんできたらそれはもしかするとマダニかもしれません。
また、ノミやマダニが持っている寄生虫・病原体がわんちゃんねこちゃんだけでなくわんちゃんねこちゃんを通じて人にも移ることがあります。
特にマダニは時に人を死に至らしめる恐ろしい病原体を持っています。ニュースでもとりあげられている「SFTS」がもっとも死亡率が高い病気です。
わんちゃんねこちゃんのためだけでなく、人のためにもノミ、マダニ予防は大切です。
松田
写真:吸血して自ら犬の体を離れたマダニ(本来は3ミリほど
の大きさ)
抗菌剤感受性試験
近年、人医療や獣医療の細菌感染症治療における抗菌剤の乱用により耐性菌の出現が問題になっています。
当院では迅速に有効な抗菌剤を判定できるように院内で感受性試験を行っています。
それぞれの症例により有効薬剤が異なります。